日本が「経常黒字国」であることの意味

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日本の「円」が安全通貨として確固たる地位を築いている背景に、長年にわたって「経常黒字国」であるという事実があげられます。

円高を引き起こすメカニズムはこちらの記事の通りですが、今回は日本の経常黒字について経済初学者のために解説します。

経常収支の構造

日本は経常黒字国です。財務省の国際収支推移によると2018年度の日本の経常収支は約20億円(19兆4144億円)の黒字でした。

とはいえ実際にはどんな活動がこの黒字を支えているのかはあまり知られていません。

経常収支は大きく

  1. 貿易収支
  2. サービス収支
  3. 所得収支

の3つに分類されます(資本移転収支は便宜上捨象)。

早速1つずつみていきましょう。

貿易収支

貿易収支とは、文字通り、輸出額から輸入額を差し引いた額のことです。ひと昔前(2011年まで)の貿易収支は+10〜15兆円ほどの黒字で「輸出大国」と称されていました。しかし、2018年度の貿易収支は+1.2兆円ほどにすぎません。

サービス収支

サービス収支は、観光などによる収支のことです。日本は基本的にずっと赤字ですが、近年の観光客増加(インバウンド需要)によりサービス収支赤字は縮小傾向にあります。2000年頃の▲5兆円から2018年度は▲0.9兆円までその赤字額が縮小しています。

所得収支

所得収支は第一次所得収支と第二次所得収支に分かれます。第一次所得収支は海外投資による収益で設備投資や証券投資がこれに分類されます。2000年頃の所得収支の黒字額はおおよそ7兆円に過ぎなかったのに対し、2018年は20.9兆円と経常黒字(=約20兆円)の大部分を占める項目となっています。
なお、第二次所得収支は政府開発援助(ODA)のうちの医薬品など現物援助を表す支援金等を指しますが、全体に占める金額の割合は僅少です。

第一次所得収支は、さらに証券投資収益(対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支)と直接投資(海外企業買収や海外建設工場)に分かれます。うち直接投資額は14.7兆円です。直接投資はM&Aなどによる海外企業への投資を指します。

ここまで見てきて、ある一つの事実が浮かび上がります。それは、日本の所得収支の3/4は直接投資(M&Aなど)である ということです。

経常収支構造から見えること

ここまで日本の経常収支構造を見てきました。時系列でみるとその「稼ぎ方」が変化してきたことがわかります。

貿易から直接投資で稼ぐ体質に変化

かつての日本は大幅な貿易黒字で、日本企業が貿易を通じて外貨を稼いでいました。しかし、近年の貿易収支は1兆円程度の黒字にとどまり、その影響は大きくありません。先述したとおり所得収支は20兆円の黒字で、とくに直接投資がうち14.7兆円を占めます。

貿易から投資で稼ぐ日本。これはクローサーの国際収支の発展段階説でいう第五段階の「成熟した債権国」への入口に差し掛かっている ことを意味します。

日本は貯蓄過剰

成熟した債権国へと突入する背景はISバランス式で理解することができます。

ISバランス式は「貯蓄 – 投資 = 経常収支」という恒等式です。

日本は経常黒字国なので右辺がプラス。恒等式なので左辺もプラスとなります。左辺がプラスということはすなわち日本は貯蓄過剰ということです(個人貯蓄や企業の内部留保など)。これってよくニュースで言われていることですよね。

本来、ISバランスは因果関係を表しませんが、あえてわかりやすい説明をすると、日本は、国内に十分な投資先が無く(貯蓄過剰となり)、国内の余ったカネを海外で運用(直接投資)している というように解釈できます。

国内投資が不足しており(貯蓄過剰)であり、余ったお金が海外に投資され収益を上げている。これが2018年現在の日本の実態だということです。

実際の為替変動要因は複雑

経常黒字を背景に日本が円高基調に触れるのは間違いなく一因ですが、実際の為替変動にはさまざまな要因が複雑に絡み合っています。

ちなみに外国為替市場における米ドルの取引額は、”1日当たり”130兆円以上です。日本の経常収支は”年間”で約20兆円なので日本の国際収支が、ドル円相場に与える影響は限定的 と言えるでしょう。

まとめ

以下、まとめです。

  • 日本は経常黒字の7割程度を直接投資で稼いでいる
  • 日本は貿易から投資で稼ぐ「成熟した債権国」になりつつある
  • 国内の投資マネーが海外に流れており、収益を上げている

資産運用における為替変動は厄介な存在です。日本円に関して、こういった事実を踏まえながら投資ライフに勤しみましょう。

ではでは。

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